東北4県を回る白崎映美さんのソロツアー「あいたいよ」いわき公演が8月30日、いわき芸術文化交流館アリオス(いわき市平三崎1)で開催された。小学生からシニア世代まで約100人の観客が、久しぶりの生の歌声とパフォーマンスを楽しんだ。
白崎さんがいわきで公演するのは3年ぶり。前回は、演劇「まつろわぬ民2017」の主演として舞台に立った。「住み着いていたようないわきの舞台に、また戻って来られてうれしい」と話す白崎さんに、会場から温かい拍手が送られた。
山形県出身の白崎さんは1990(平成2)年、バンド「上々颱風(シャンシャンタイフーン)」のボーカルとしてデビュー。この日のライブでも歌った、映画「平成狸合戦ぽんぽこ」の主題歌を担当するなど、幅広い音楽活動を続けている。東日本大震災後は、「東北人として被災地のために何かしたい」と、自身のルーツである東北出身者や東北をサポートしたいという音楽仲間と「白崎映美&東北6県ろ~るショー!!」(結成当初は、「白崎映美&とうほぐまづりオールスターズ」)として、全国で公演を続けていた。
今年は同バンドで東北6県を回るツアーを予定していたが、新型コロナウイルス流行のため中止に。オンラインの無観客ライブなどを行っていた白崎さんだが、「東北に歌声を届けてほしい」とのオファーを受け、ギターと2人という最少人数での初のソロツアーを決めた。
ライブでは自身の楽曲のほか、「東北を旅行した気持ちで」と、東北各地の民謡やいわき市の塩屋崎が舞台の、美空ひばりの「みだれ髪」など福島ゆかりの歌も披露。観客が自然と口ずさむ場面も。避難指示解除前の富岡町を訪れた際に桜の名所「夜の森」を知り、「みんながまた夜の森に集まれるように」との思いで作ったという「夜ノ森月ノ下」など、震災後福島県を訪れて生まれた楽曲も歌った。
休憩を挟んで90分のライブは、前半はアットホームに温かく、後半はシリアスに、終盤には熱く盛り上がって幕を閉じた。ライブを終えた白崎さんは「ツアーで回っていて、東北各地ちょっとずつ手をつないでつながっていっていると感じる。いわきはお邪魔する度に知り合いが増えて、親せきがたくさんいる、帰ってこられる場所になっている」と笑顔を見せた。「私が『東北さ、いい事いっぺ来い!(東北にいいことがたくさん来ますように)』と歌を届けているけど、(一方通行ではなく)元気や楽しいことや幸せが回っていく、(ライブを)そんな場所にしたい」とも。
同公演は、会場となったいわきアリオスで3月以降、約半年ぶりの音楽公演となった。通常233席入る客席を半分以下の100席とし、客席を1席ずつ空け、着席での鑑賞とした。休憩時間を設け、ライブ中に換気も行った。ライブ開催に当たっては、地元いわきのエンターテインメントバンド「十中八九」のメンバーが検温などを行い、運営をサポートした。
同ツアーは後日、八戸公演、山形公演を動画配信することが決まっている。