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TEDxTohokuに、いわき市と双葉町のスピーカーが登壇 伝統や酒造の継承、人権について発信

TEDxTohokuに参加した11組の登壇者。右端が菅波さん、左から4人目が田仲さん。共に、いわき市出身・在住。

TEDxTohokuに参加した11組の登壇者。右端が菅波さん、左から4人目が田仲さん。共に、いわき市出身・在住。

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 6月12日、せんだいメディアテーク(仙台市青葉区)で開催されたトークイベント「TEDxTohoku 2022 まだ見ぬ『みちのく』へ、ともに」で、いわき市出身・在住の田仲桂(たなか・けい)さん、菅波香織さん、双葉町出身の冨沢真理さんが登壇し、自身の思いと活動を発信した。

登壇を終えた、田仲さんと菅波さん

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 イベントのテーマは、ダイバーシティ。いわき市の大國魂(おおくにたま)神社大和舞伝承会会員の田仲さんは、同神社に奉納する清めの舞「猿田彦の舞」を伝承会会員とともに披露。東北には多彩な郷土芸能が現存していること、その担い手は、性別や地域、国籍、身体状態などの縛りが多かったが、昨今は継承のため、地域によってはそれらが取り払われることも増えてきたことに触れ、「郷土芸能は、時代によって変化できるダイバーシティな存在である」と紹介した。

 同じくいわき市の弁護士・菅波さんは、人権侵害を「心のエラー」と表現し、慣習の刷り込みや自身の思い込みで、周囲の人の人権を傷つけてしまっている現代社会を指摘。結婚して姓を変えた側の負担を想像できているか、大事なことを決める会議のメンバーが男性ばかりになっていないか、「女らしさ」を押し付けていないかなど身近な例を挙げながら、知らず知らず人権を傷つけている「エラー」に気づいて変えていくことを、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を体験した東北だからこそ「私も大事、あなたも同じように大事」にしていけると訴えた。

 双葉町の酒造・白富士酒造副社長の冨沢さんは、移住先のシアトルからオンラインで参加。約300年続いていた同酒造は、2011年の東日本大震災と原発事故で双葉町のほぼ全域が帰還困難区域となったのに伴い、醸造の場を失った。国内での再開を試みたがかなわず、震災後縁ができたアメリカシアトルに再開の地を求め家族で移住。異文化を理解し日本酒文化をも理解してもらえるよう努め、家族の大病とコロナ禍を乗り越え2021年、アメリカ産山田錦を使用した新しい日本酒「SHIRAFUJI」の醸造にたどり着いたことを紹介。「酒造の21代目として『のれんをつなげる』ことは何よりも大事なこと。先祖もさまざまな災禍を乗り越え、のれんをつないで来た。困難なことも声を上げることで助けられた。皆さんもあきらめないでください」とメッセージを送った。

 TEDxTohokuは2011年、東北の有志の学生により設立。2015年に開催して以降7年ぶりの開催だったが、会場には地元東北をはじめ国内外から約170人が集まり、登壇者のスピーチやパフォーマンスに惜しみない拍手を送った。登壇内容は、TEDxTohokuのライブストリーム、Youtubeチャンネル(後日配信)で見ることができる。11組の登壇者は以下の通り。

 黒澤博之さん(三絃・津軽三味線奏者/岩手県盛岡市)、むらかみみちこさん(FIRST ASCENTJAPAN理事長/宮城県気仙沼市)、林篤志さん(Next Commons Lab創設者/岩手県遠野市など)、田仲桂さん(大國魂神社大和舞伝承会会員/福島県いわき市)、髙橋ディーゾン リャネットさん(健育会ひまわりデイサービスセンター介護職員/フィリピン出身、宮城県石巻市)、小林稜平さん(Elevation Space代表/秋田県潟上市)、冨沢真理さん(白富士酒造副社長/シアトル在住、福島県双葉町)、渋谷真子さん(車いすYouyuber「現代のもののけ姫Maco」/山形県鶴岡市)、クドウナオヤさん(CMプランナー/秋田県)、菅波香織さん(弁護士/福島県いわき市)、松田崇弥さん・松田文登さん(ヘラルボニー代表、副社長/岩手県)。

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