福島第一原発事故のあった福島県浜通りを中心とした地域で、新たなチャンレジを始めようという人を支援する「福島12市町村スタートアップセミナー~浜魂 in 富岡~」が2月26日、「さくらモールとみおか」(双葉郡富岡町)で開催された。当日は、数多くの社会課題を抱える双葉郡内で新たな取り組みを始めようという4組が事業計画やアイデアを発表。参加者と共にアイデアを練り上げ、今後の計画を発表した。
同セミナーは、いわき市平で起業家支援などを行っているNPO法人「タタキアゲジャパン」と、被災地で新たなチャレンジを志す人たちを支援する「FVC(フロンティア・ベンチャー・コミュニティ)」の共催。同NPOが毎月開催しているプレゼンイベント「浜魂(ハマコン)」をベースに開催された。
セミナー冒頭では、すでに富岡町で飲食事業や給食事業を再開している鳥藤本店(いわき市四倉町)の藤田大さん(双葉郡富岡町出身)が講演。藤田さんは、震災後からの歩みを振り返りつつ、「本気で復興を考え、行動したい人たちが必要なことを一緒にやっていくことが大事」と語り、地域の課題解決に向けて双葉郡全体で取り組むことの重要性を強調。「子どもたちに『おかえり』と言える双葉郡をつくっていく」と締めくくった。100人を超える参加者が真剣な表情で聞き入った。
講演後のプレゼンでは、ふたば未来学園高校の石田敦也さんと半谷大樹さん、県内のNPOの中間支援を行う鈴木亮さん、郡山市から楢葉町への移住を考えている古谷かおりさん、川内村で木炭を作っている関孝男さんの4人が参加。「双葉郡でのファーマーズマーケット実現」=石田さん、半谷さん、「双葉郡のNPOを集約する目録作り」=鈴木さん、「楢葉町で原発作業員を癒やすコミュニティースナック開店」=古谷さん、「川内村で木炭産業復活」=関さん。これから取り組んでいきたいプロジェクトの中身と、参加者全員で考える議題を発表。発表の後のブレーンストーミングで、それぞれアイデアを練り上げた。
双葉郡では、すでに広野町と楢葉町、川内村、葛尾村が避難指示を解除しているほか、富岡町、浪江町も今年3月末から4月1日をもって、一部帰還困難区域を除いた全ての区域の避難指示を解除することを発表している。しかし、地元に戻って事業を再開している事業者は決して多くなく、いかにして事業を再開、あるいは新規事業を興し、地域経済を活性化させるかが大きな課題となっている。
セミナーを主催した同NPO理事、小野寺孝晃さんは「今回は経済産業省と富岡町役場の協力で双葉郡での浜魂開催が実現した。徐々に避難指示は解除されているが、帰還される方はまだまだ少ない。浜魂を通じて魅力的な事業を増やし、帰還される方も増やすことができれば」と話す。