いわき市南部の里山、田人町の綱木(つなぎ)地区で約5万株の「クマガイソウ」が見頃を迎え、圧巻の景色が広がっている。
クマガイソウは直射日光が当たらない林などに群生する多年生ラン科の植物で、袋のような大きな花が特徴。唇弁(しべん)が発達した大きな花が、平家物語に登場する熊谷直実(くまがいなおざね)の母衣(ほろ)に似ていることから「クマガイソウ」と命名された。
標高450メートルほどある綱木地区は田園風景が広がる小さな集落。その地で、故・平子長雄さんが個人の手で約10年かけて約3万株まで増やし育てた。現在は、2014年に発足した地元市民により構成されるボランティア団体「クマガイ草を守る会」の手によって管理されており、株数も5万株を超える。クマガイソウは環境省が絶滅危惧種に指定しており、同地区の群生数は日本最大級と言われている。
来場者数は年々増加し、昨年は4500人以上が来場。今年も4月27日の開園式には、幻の光景を一目見ようと、険しい道にもかかわらず多くの人が綱木の土地を訪れた。気温が上がらない日が続いたことで開花がやや遅れてはいたものの、今月下旬ごろまで見頃が続くという。
会場ではクマガイソウの見学のほか、山水で入れたコーヒーなども無料で提供している。同会の会員は、「せっかく山の中まで来てくれたのだから、おいしいコーヒーでも飲んでゆっくりしていってほしい」と歓迎する。
同地区へは、同市遠野町から県道いわき石川線を西に向かい、皿貝トンネルの手前を入遠野方面に曲がり、「中根の湯」を過ぎてから1キロほどの所で左折。大平橋を渡り、清道川沿いの道を6キロほど進む。
開園時間は9時~16時。保護協力金として1人300円が必要。