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南相馬市の「東町エンガワ商店」閉店へ 住民に寄り添った3年間

東町エンガワ商店のスタッフ(写真一番左が、マネジャー常世田さん)

東町エンガワ商店のスタッフ(写真一番左が、マネジャー常世田さん)

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 南相馬市小高区にある「東町エンガワ商店」(南相馬市小高区東町1)が12月5日、閉店する。

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 同店は、小高ワーカーズベースと菓詩工房わたなべが共同で、南相馬市より受託する形で2015年9月に営業を始めた。開業時、福島第一原発事故の影響を受けていた小高区には避難指示が出ており、大手チェーンなどのスーパーも無かった。避難指示解除準備期間中、6年近く空き家になっていた住宅を片付けるなど、帰還準備に来ている住民にとっての生活インフラとして初めて開店したのが東町エンガワ商店だった。

 「改めて、すごいことをやってきたと思う」と、感慨深そうに話すのは同店マネジャーの常世田(とこよだ)隆さん。開業当時は大手スーパーのサポートを受け営業していたが、利用者の要望を調べたり、仕入れる商品を精査したりするなどして工夫していった。「大手スーパーでは10個入りで1パックの卵が当たり前かもしれないが、ここを利用する人たちは独居などで家族が少ないため、少し規格の小さいものを用意すると手に取ってくれる人が増えた。手間暇のかかることかもしれないが、住民にとって必要なことを知り提供していくことが大切だった」と話す。

 同店は、帰還した小高区の住民が集い、人と人、人と地域が再び「縁」を結ぶきっかけをつくり出す商店になるように、という思いを込めて東町「エンガワ」商店と名付けられた。

 「開店してしばらくは、地元の人同士が『どこに避難していたの?』『久しぶりね、元気にしてた?』など、再会を喜ぶ姿を毎日目にしていた。震災と原発事故によって突然バラバラになってしまった住民たちにとって、ここに来れば誰かと会える、と思ってもらっていたのでは」と常世田さんの顔もほころぶ。昨年4月に小高産業技術高校が開校すると、店内のイートインスペースで地元住民が久しぶりに見る高校生にうれしそうに話しかける姿も印象的だった、とも。残りの営業期間で「利用者、特に常連住民の不安を取り除いて、エンガワ商店としての役割を全うしたい」と気を引き締める。

 閉店翌日の12月6日には、公設民営の商業施設として「小高ストア」(南相馬市小高区上町1)がオープンする。「お客さんからは、エンガワ商店の思いを受け継ぎ、住民が必要としていることは何かということをくみ取ってほしいとの声を聞いている」と、常世田さんは期待を込める。

 東町エンガワ商店の営業時間は9時~20時(12月2日は定休日)。

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